院長コラム

診療方針2018.03.21

 私が医師になりたての頃に、先輩の先生に「患者さんはせっかく来たのだから、薬は必ず処方するように。その方が親切だよ」と言われたのを覚えています。別の先生には「薬をなるべく出さない人が、名医である」と言われました。

 病気に応じてあらかじめ決めておいて処方することを約束処方といいますが、約束処方の場合、病気の時期・症状の強弱にかかわらず、一定の処方を行うため、症状の強い状態に合わせた薬の処方となります。そのため薬の種類が多くなってしまいます。病気が今どの時期にあるのかなどの自然経過を考慮し、問診をしっかりしたり診察することで、それほど多くの薬を出さなくてもよい場合も結構あります。何種類か薬を処方しても、最初から使用する薬、悪化したら開始する薬、良くなったら早めに切り上げる薬など、お話しすることで、実際に使用する薬を少しでも減らすことができます。

 近年、抗生物質の多用(乱用)による耐性菌の問題がクローズアップされております。一般的に風邪(ほとんどがウイルス感染)には、抗生物質(細菌感染に効果)は効果はなく、また、かぜのひき始めから抗生物質を投与し、繰り返すと耐性菌を作り出してしまいます。欧米諸国と比べ、日本では抗生物質の使用量が圧倒的に多く、そのため抗生物質に対する耐性菌も多くなっています。 

 「可能な限り必要な薬だけを投与する」。患者さんのご家族と協力しながら、長期的な視点ももって医療を見つめ、少しでも患者さんのからだに負担の少ない医療を目指したいと思います。