お知らせ

子宮頸がん(HPV)ワクチンについて2023.03.26

どんな病気?

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、主に性交渉によって生殖器やその周辺の粘膜にイボをつくるウイルスで、16、18、31、33、45、52、58型などのHPVはがんになりやすく、子宮頸部(子宮の入り口部分)に感染すると子宮頸がんに進行することがあります。そのほか中咽頭がん、肛門がん、膣がん、外陰がん、陰茎がんなどの原因になります。子宮頸がんの主な原因である16型と18型のHPVは、若年者に多いといわれています。女性の約80%が知らない間にかかったり、治ったりしています。

重症になると…

HPVに感染しても、ほとんどは自然に治りますが、一部は持続感染し、がんになります。HPV感染の約10%は細胞に初期の異常(異形成)が見られ、約4%の方は前がん状態になり、普通はゆっくりと本当のがんに進行します。前がん状態からでも、自然に正常に戻ることが多いのですが、最終的に0.1~0.15%の方(毎年1~1.5万人)が子宮頸がんになります。子宮頸がんは、毎年約2,800人が亡くなるたいへん重大なVPDです。主ながんは中高年以上で増加しますが、子宮頸がんは20代前半の発症者もおり、30~40代までの若い患者が増加しています。子育て世代に多いことから、マザーキラーともいわれます。子宮頸がんは、検診を若いうちから定期的に受けることで、前がん状態やごく早期に発見することが可能です。言い換えれば、子宮頸がんは検診以外では発見が難しく、自覚症状が現れたときにはがんが進行しています。このようにがんになる可能性は低く、普通は進行がゆっくりで、繰り返しの検診により発見することが可能ですが、それでも残念ながら毎年約2,800人が亡くなっているのが現実です。

接種時期と接種回数

定期接種の対象年齢は小学校6年生~高校1年生相当の女子です。

接種機会を逃した人のキャッチアップ接種

1997年4月2日~2006年4月1日生まれの女子は、2022年4月から2025年3月までの3年間、定期接種としてHPVワクチンを無料で受けられます。
また、2022年3月までに自費でワクチンを受けた人に対して接種費用を払い戻す制度があります。対象者、申請方法、償還額、申請期間は自治体ごとに異なる場合があります。詳しくは、お住いの自治体にお問い合わせください。

おすすめの受け方

いずれのワクチンも初めての性交渉を経験する前に接種を始めることが望ましいです。ただし、性交渉の経験があっても、HPV16型・18型に感染していなければワクチン接種で感染予防が期待できます。

 

定期接種
9価(シルガード9)

** 小学校6年生の学年から、15歳未満の場合は2回接種。2回目は初回接種のから6~12か月後に接種。

** 15歳以上は合計3回接種。2回目は初回接種の2か月後、3回目は初回接種の6か月後に接種。

 

添付文書

9価(シルガード9)

9歳以上女性に、合計3回接種。2回目は初回接種の2か月後、3回目は初回接種の6か月後に接種します。

9歳以上15歳未満の女性には初回接種から6~12カ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができます。

なお、2回目および3回目の摂取が2か月後および6か月後にできない場合は、2回目は初回接種から少なくとも1か月以上、3回目は2回目接種から少なくとも3か月以上間隔を置いて実施します。

9歳以上15歳未満の女性に合計2回の接種をする場合、2回目は初回接種から少なくとも5か月以上の間隔を置いて実施します。2回目は初回接種から5か月未満の場合は、3回接種を行います。3回目は2回目接種から少なくとも3か月以上間隔を置いて実施します。

 

ワクチンの効果

いずれのワクチンもワクチンに含まれているタイプのHPV感染症を防ぎ、子宮頸がんなどの発病を予防します。また、がんになりやすい16、18型のHPVは、若年者に多いといわれています。初めての性交渉の前までに受けることで予防効果が高まります。実際に、スウェーデンの報告では、17歳未満のワクチン接種で子宮頸がんリスクが88%減少しました。英国では、12-13歳のワクチン接種で87%減少しました。約70%の子宮頸がんを予防し、効果は20年くらい続くとされています。

ワクチンと検診で予防

ワクチン接種だけですべての子宮頸がんが防げるわけではありません。性交渉の経験がある人は、必ず子宮がん検診を受けることが大切です。検診受診率は、欧米では約80%ですが、日本ではなんと約40%とたいへん低いのが問題です。

HPV感染症による子宮頸がん予防で最も重要なことは、定期接種の年代の人は必ずワクチンを受けること。性交渉経験のある人は、20歳を過ぎたらワクチン接種の有無にかかわらず子宮がん検診をしっかりと受けることです。

接種後の注意

副作用として受けたところの痛み、局所反応があります。接種時の痛さはほかのワクチンと大きく変わらないとされますが、数日間にわたり筋肉痛がおこることがあります。このワクチンは血管迷走神経反射(失神)を起こすことがあります。これはワクチンが痛いためでなく、ワクチンが痛いのではないかと緊張したり、その緊張が解けたりしたときに起こります。10歳以上の女性は、ワクチン接種(種類は問いません)だけでなく血液検査や献血でも失神を起こす人がいます。緊張しやすい人は接種前に接種医に申し出て、寝た姿勢のままで受けるなど30分程度はしっかり落ち着くまで接種した医療施設で横になるのも良いことです。

予防接種ストレス関連反応(ISRR)

2020年1月、WHOは「予防接種ストレス関連反応(Immunization Stress-Related Responses:ISRR)」という概念を発表しました。 ISRRは、年齢(10歳代)、以前の注射後の失神などのいやな経験、血液や注射やけがに対する恐怖などの予防接種に関連する「不安」によるストレスが原因で起こりやすくなります。接種前~接種後5分以内におこる急性ストレス反応や血管迷走神経反射と、接種後数日でおこる解離性神経症状反応(Dissociative Neurological Symptom Reactions:DNSR)に分類されます。積極的な勧奨接種中止のきっかけとなったHPVワクチン接種後の多様な症状はDNSRの特徴と一致します。DNSRは予防接種以外のストレス要因によってもおこりますが、接種後 7 日以内に生じた反応はISRRと考えることが妥当とされています。

接種に対して極端な不安や恐怖心がある場合は、無理をせずにかかりつけ医に相談してください。また接種後に、健康に異常を感じた場合は、不安が症状をさらに悪化させることもありますので、自己判断をしないことが大切です。